三女の結婚式なのに表情のさえないクロードとマリー(右のふたり) (C)2013 LES FILMS DU 24 - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - TF1 FILMS PRODUCTION
三女の結婚式なのに表情のさえないクロードとマリー(右のふたり) (C)2013 LES FILMS DU 24 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION

異人種間混合結婚率が世界一位といわれるフランスならではのコメディドラマ。4人の娘たちの結婚相手が、それぞれユダヤ人、アルジェリア系アラブ人、中国人そしてアフリカ系黒人という花婿たち。両親は、寛容にも結婚に反対はしなかったが、異人種結婚による家族内国際騒動に揉まれ、母親はうつ状態に陥っていく。夢心地の二入の世界だけでは通らない国際結婚の問題が、“笑い”の味付けで乗り越えられていく展開は痛快であり、ほろっとさせられる。うまい映画だ。

あらすじ
世界遺産の古城めぐりの観光地ロワール県のシノン市の館で暮らすクロード(クリスチャン・クラビエ)とマリー(シャンタル・ロビー)のヴェルヌイユ夫妻。パリで三女の結婚式なのだが、クロードとマリーはさえない気分で表情も暗い。理由は、娘たちの結婚相手が、3人とも非白人の異人種で宗教もカトリック教徒ではないこと。長女イザベル(フレデリック・ベルイ)の婿はユダヤ人の弁護士ラシッド(メディ・サドゥン)。次女オディル(ジュリア・ピアトン)の婿はアラブ人のダヴィド(アリ・アビタン)。結婚式の三女セゴレーヌ(エミリー・カーン)の婿は中国人のシャオ(フレデリック・チョウ)。ヴェルヌイユ夫妻の最後の望みは、四女ロール(エロディー・フォンタン)が、シノンの教会で結婚式を挙げてくれる白人のカトリック信徒の婿と結婚してくれることだ。

三女の結婚式から半年後、次女オディルとダヴィドの息子がユダヤ教での割礼式の日に家族みんなで集まりお祝いする。だが、クロードが軽い冗談のつもりで、異人種の多い「モンマルトルは外国人ばかりだ」と言ったことに、婿たち3人は「差別発言だ」避難し、言い合いのなった。多勢に無勢のクロードは腹を立て、料理が出てくる前にマリーを連れて帰ってしまう。一緒になってクロードを避難していた婿たちだったが、お互いの民族のことを皮肉交じりに言い合ううちに大げんかになってしまう。

反目し合っていたクロードとパスカルの父お親どうしだが、ついに四女ロールとシャルルの健康式当日を迎えた… (C)2013 LES FILMS DU 24 - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - TF1 FILMS PRODUCTION
反目し合っていたクロードとパスカルの父お親どうしだが、ついに四女ロールとシャルルの健康式当日を迎えた… (C)2013 LES FILMS DU 24 – TF1 DROITS AUDIOVISUELS – TF1 FILMS PRODUCTION

マリーは、娘たちや孫に会えない毎日に気持ちが沈んでいく。たまりかねてクリスマスに娘夫婦たちを館に招いた。娘たちは、母親が本当のうつ病になっては大変と、夫たちを説得しマリーの招待を受けて家族みんなで集まった。クロードとマリーには、クリスマス休暇で集まるこの機会に、四女ロールに知り合いのカトリック信徒の青年を紹介し、結婚してほしいと画策していた。それを感じ取ったロールは、自分には婚約した相手がいると告白した。婚約者がカトリック信徒と聞いて大喜びするクロードとマリー。だが、ロールは一つだけ言いそびれていることがあった。ロールの相手は、コートジボワール出身の黒人シャルル(ヌーム・ディアワラ)であること。しかも元軍人で誇り高いシャルルの父親アンドレ(パスカル・ンゾンジ)は、フランス人が大嫌いだった。

みどころ・エピソード
移民の多いフランス。多様な言語、宗教、文化、政治思考がぶつかり合いながらも“笑い”飛ばして、いつのまにか和していく展開はフランスらしいエスプリを愉しめる。

2014年のフランスでの興行収入第1位を記録し、“5人に1人が観た”といわれる動員数を獲得した作品。クリスマスに雪が降り、婿さんたちが、頭にキッパ(ユダヤ教徒が被る小さな帽子)、中国人風の細い目にアラブ人のような顎鬚をつけた雪だるまを作り出して意気投合。童心にかえって雪合戦が始まり、「アラーは偉大なり」と叫んでダヴィドの投げた雪玉が義父クロードの顔に命中というジョークは、2015年11月のパリ同時多発テロ事件以前だから描けたシーンだろう。

テロ事件後もパリでは“これまでの生活、生き方を変えない暮らしでテロに抗する”行動をとる人が多くいたという。さまざまな違いを認め合い、楽しみ合いつつ、明日を明るく生きようという本作のメッセージが、これからも観られ続け、伝えられてほしいと願う。 【遠山清一

監督フィリップ・ドゥ・ショーブロン 2013年/フランス/97分/映倫:G/原題:Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu? 配給:セテラ・インターナショナル 2016年3月19日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。
公式サイト http://www.cetera.co.jp/hanamuko/
Facebook https://www.facebook.com/saikouhanamuko/

*Award*
2015年:リュミエール賞脚本賞受賞